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さてPippinのそもそもの生い立ち、公表されている仕様は別 稿のとおりなのですが、これからPippinで遊ぶ前に、今現在わかっていることを整理しておきましょう。

  1. Pippinとは何であったか

    PippinはAppleの当時のMacOSライセンシング政策によって生まれたMac互換機の一種です。実際にはPippinにはハードディスクがなく、MacOS7.5.xをベースにしたPippinOSをアプリケーションと一緒に焼きこんだPippin専用CD-ROMからのみ起動し、使用することができます。とはいえ、Pippin OS がMacOSとほとんど同じであり、Pippinハードウェアが当時のPower Macに非常に近いことから、発売時点ではPippinではMac用として作られたアプリケーションが容易に動く環境だったといえます。

    ただしMacアプリケーションをPippin で動かそうとしたとき、メモリー不足が重い足枷となったでしょう。メインメモリが標準で5MBでは、既に肥大化していたPower Mac用アプリケーションではかなり苦しかったと思います。またハードディスクがないことから、初期設定などは128KBのフラッシュメモリに保存する仕様となっており、いろいろなソフトをとっかえひっかえ使用する一般 ユーザーにとっては悩みの種だったでしょう。

    Macに比べて劣っていることばかりではありません。例えばPippinのビデオ出力はテレビに画像を出したときにちらつきを押さえ、また必要なら640x480の画面 を普通のテレビで見ることのできる512x384程度の範囲に圧縮する機能を持っています。当時のAV Macのビデオ出力と比べるとその優秀さがわかります。そしてトラックボールを持つユニークなコントローラ(通 称ピピコン?)はMacユーザーにもファンの多い逸品ですね。コントローラポートは形こそ違え、ADBポートそのものです。シリアルポート2基、Audio IN/OUTなどはMacと全く同じです。Macの周辺機器がPippinで使え、Pippinの周辺機器はMacで使えたわけです。

  2. Pippinの拡張性について(ソフトウェア)

    MacOSを始めAppleのソフトウェアはクローズドであり、Appleによって公表されている以外のことは知ることができません。ハードウェアのように配線をたどることもできず、不明な点は想像によって補うしかありません。PippinOSはMacOSと同じく、本体上のROMとCD-ROM上のシステムファイルからなります。PippinではこのROMはメモリーカードとなっており交換できます。実際、公式なバージョンアップも行われ、後に出てくる「改造用ROM」への交換も容易です。

    当時Appleとしては、ハードウェアはライセンシーの方で勝手に作ってくれ、そのかわりOSでロイヤリティ取るよ、という方針だったようです。それでOSを無断でコピーされないための仕組みがいろいろ施されています。代表的なものがご存じの認証機能です。実際に販売されていた当時のPippinを買ってきて、そのままの状態では正規に販売されているCD-ROMタイトルしか動作しません。PippinOSをコピーして自分の好きなアプリケーションと組み合わせたCD-Rを作っても、イジェクトされてしまいます。それどころか正規CDの内容を少し変えただけのCD-Rを作っても動作しなくなります。

    しかし、最近マクサス等で販売されている通 称「改造用ROM」または「1.3」ROMに変えるとこの制限はなくなり、自分で作ったCD-Rを使うことができるようになります。ROMの内容を変更することはおよそApple以外には不可能と思われます。しかもこのROMはマスクROMとして大量 に作られており、Appleのロゴや部品番号が入っていることから見ても、Apple自身によって作られたものであることは間違いありません。Appleとバンダイの間の何らかの話し合いによって、Pippinの認証機能が撤廃されたのでしょうか。

    ともあれ、これで自分の必要なCD-ROMをつくれる環境は整います。ただ、PippinOSの各種コンポーネントのどこまでが正式に使用可能なのかよくわかりません。市販のCD-ROMタイトルに入っているものは使用可能なはずですが、Pippinの正規デベロッパーにならないと正確なところは不明です。Pippin OS自体を(個人的使用であるといいわけするにしても)拡張するのはかなり微妙な話かと思います。例えば実際に動作するかどうかは別 にして、PippinOS(MacOS 7.5.x相当)で走らないソフトを走らせるためにPippinにMacOS8.xのコンポーネントを載せることはいかがなものでしょうか?

  3. Pippinの拡張性について(ハードウェア)

    こちらは多くの方がチャレンジされていまして、いろいろなことがわかっています。Pippinのハードウェアはいわゆる第二世代Power Mac、7200/7500/8500/9500と似ています。(ATAではなく)内部SCSIバスによってCD-ROMを接続し、またPCIスロットを一つだけ(残念ながら標準PCIではなく、独自仕様コネクタですが)持っています。内部SCSIバスにハードディスクを増設する改造は最もポピュラーで、AkibaRangerさん、kankobaさん、他多くの方が成功されています。このサイトにも実験結果 を掲載しています。また独自仕様PCIスロットを介して別のSCSIバスを増設し、そこにMOドライブをつけたものがオリンパス社から販売されていたMO Docking Turboです。

    内部SCSIバスへの拡張、というより標準内蔵のCD-ROMをグレードアップするものとして、当時7600/8600等に使用されていた8X CD-ROMへの取り替えができます。さらにバンダイがMacWorld Expoに参考出品していたようなPDドライブへの取り替えも可能性としてはあります。なお、8X以上はこのころからAppleもIDE/ATAPIのCD-ROMに移行したため、適当なものがありません。

    独自仕様のPCIとなっている理由は、これが純正のフロッピーディスクユニットの増設端子を兼ねているためです。Macハードウェアにおいてフロッピーディスクドライブ (FDD)はAppleの独自ASIC(専用IC)によって制御されます。これは歴史的にSteven Wozniak(ご存じですか?)がAppleIIの専用FDDであるDiskIIを設計したときからの流れで、IWM (Integrated Woz Machine)とよばれています。Pippinのころにはすでに他の機能と一緒に統合されたASICの一部となっていますが、やはり直接ASICから制御されます。またFDDに必要な電源も供給します。PCIにこれらの信号、電源が追加された結果 120Pのコネクタになっています。

    FDDはともかく、このPCI 端子を使っていろいろな拡張が考えられます。EthernetカードやSCSIカードの追加は実績がありますが、面 白そうなのはVideoカードの追加やUSBやFirewireなど最新外部ポートの拡張です。特にUSBが追加できれば非常に利用範囲が広がると思うのですが、気になるのはMacOSのサポートがOS8.5くらいからということです。 このコネクタが下向きの外向き、ということでこのままでは使いづらいので、ちょっと大がかりですが、向きを横向きに変えつつ標準のコネクタに変換する中継基板を作るのが正解です。そうしておいて、PCIのボードをフロッピーユニットのケースの中にいれてしまうのが、外見もすっきりしていいですね。実際、純正フロッピーユニットの中に(形状的には)これに近い基板が入っています。

    いろいろなアプリケーションを動かそうとして気になるのは、やはりメモリの制限です。ハードディスク増設やMOによって、不揮発メモリの心配がなくなったとすれば、残るはメインメモリです。とりあえず、市販されていた純正8MB拡張メモリーモジュールは必須でしょう。これ以上の拡張には独自でメモリーモジュールを作成するか、強引に市販のメモリーモジュールを実装する必要があります。Pippinは最大32MBのメモリーを増設できることになっています。しかし増設できるメモリーが非常に制限されており、例えば72P-SIMMでも、数社のある特定の型名のみが使用可能です。また強引に実装するのも半田づけ箇所が多く、基板のあちこちにリード線をとばさなければならないなど決して簡単ではありませんので、こちらもある程度の数をまとめ、基板を起こしてメモリーモジュールを作成するのが常道でしょう。

  4. Pippinをハードディスクから起動できるか

    Pippinにハードディスクを増設することは、既に多くの方が成功されています。ただし、これはMacのようにハードディスクから起動できるという意味ではありません。これもMacOS(PippinOS)のライセンシングによりロイヤリティ収入を得る、というAppleのポリシーに基づき、PippinのROMに何らかのプロテクトが存在するらしく、通 常ハードディスクからの起動は不可能です。チャレンジされた方も多いようですが、成功されたとのお話は聞いていません。例外はPippinのCD-ROMタイトルのデベロッパーに供給された開発キットです。当時8万円で販売されたこのキットには、ハードディスクから起動できる機能が備わっていたとのことです。

  5. Pippinを他のOSで使用できるか

    Pippinで他のOSを動作させようとチャレンジされている方もいるようです。Macアーキテクチャのハードウェアで使える他のOSとしては、LinuxとBeOSがあります。ご存じのとおりLinuxは発展著しく、次々と新しい起動手段が開発されています。中には起動時にほとんどMacOSを使用しないものもあり、大いに期待したいところです。AppleのクローズドなOSを使用するには、常に制限がつきまといますし、Pippinハードウェアを100%活用するにはぜひともフリーなOSが欲しいですね。おっとフリーでなくてもBeOSがPippinをサポートしてくれたら、それは素晴らしいのですが・・最近のBeとAppleの関係もあまり良さそうではないので、Pippinみたいなややこしいものは無理でしょうね。
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